個展を終えて。
広島の御手洗(みたらい)で開催された個展が終わってから二週間近く経ちます。その間、個展をする前と後に思ったことををゆっくりと咀嚼していました。それを書き出して次に繋げるための第一歩にしたいと思います。
今回の広島での個展は、UNKNOWN ASIAという大阪の大きなアートフェアに出たことがきっかけとなりました。国内外からアーティストが集まるこの芸術のお祭りに多くのアートを愛する人たちが訪れ、作家や作品の良い出会いの場となっていました。
「ビニール袋の作品はどんなふうに見てもらえるんだろう」と会場のブースに立った3日間は多くの出会いがありました。感動してくれた人、興味が無くてすぐに立ち去って行く人、海外の言葉で話しかけてくれる人、参考にしたいと熱心に話を聞いてくれた学生さん、つまらないという人。
多くの初めましての人たちがビニール袋の絵を前にそれぞれの気持ちを持って話をしてくれました。そのコミュニケーションのあり方がなんともサッパリとしていて、「言葉を尽くさず、絵で会話する」ことを経験することができたのです。
「もっと多くの知らない人と絵を通して話がしたい」そう思っていたタイミングで、大学の頃の友人が「GWにアートイベントをするので、その期間中に個展をしないか?」と誘ってくれました。詳細を聞けば瀬戸内に浮かぶ島の小さな町のギャラリーでだという。
とにかく一度見に行こうと1月に現地を見に行って、「やるよ」と返事をしました。島の人たちに、街から来た作家とビニール袋の作品はどんなふうに映って何を感じてもらえるのか、作品を見て言葉を貰えたらもっと作品の持つ可能性を信じられる気がしたのです。
そして4月29日。GWに始まった御手洗のアートイベント潮祭(しおさい)と同時開催という形で開かれた個展は、潮祭のスタッフさん達や御手洗に住むの方々の協力のおかげで、忙しく感じるほどの動員となりました。
最初アウェイ過ぎる場所での恐れからか、「アートはわからない」と線を引かれることをどこかで覚悟していた私は謝りたくなりました。
人の持つ感受性や想像力には街も島も関係が無かった。UNKNOWN ASIAの時と同じようにその人が持つ言葉で、「生活が作品になるんですね」、「こんな絵はじめて見た」、「タイトルが詩みたいですね」他にもたくさん話をしてくれました。
感想をいただく中でビニール袋の絵を通して「いつかとどこかの生活」を多くの人に想ってもらえたように感じました。これは今回の展示で得られた得難い確信のひとつで、モチーフを通してできる共感の力の証明でもありました。
スケジュールの関係で搬入から個展半ばの5月2日までの5日間の滞在となりましたが。個展で感じたこと、島の暮らし特有の豊かな自然と時間の流れを経験できたことは、作品を作り続けていく上で自分だけの宝物となりました。
この場を借りて個展「I care . / わたしは気にしている」に関わっていただいた皆様にお礼を伝えたく思います。
本当にありがとうございました。また作品をお見せできるように作り続けることが、再びお会いすることに繋がることと信じて、日々生活を想い制作していきます。
そして、今回の個展で感じたことの片鱗を少しでも関西の方に感じてもらえるように、また大阪でも展示をいたしますので。その折は是非お越しいただけたら嬉しいです。